遅れましたがクリスマス
すごい遅れましたがクリスマス記事です。
私の休日事情は、今の投稿になっていることから察してください。
お待たせしまして申し訳ございません。
私の休日事情は、今の投稿になっていることから察してください。
お待たせしまして申し訳ございません。
『遅くなったが、メリークリスマス』
アルバイトの帰り道に死んだ目でしこたま買ったチューハイをかかげると、ハイドは苦く、左脳と右脳はお茶目に、ジキルは柔らかく、それぞれバラエティーに富んだ笑みを浮かべて後に続いた。
26日。
1日遅れのパーティーはこうして始まった。
イブも当日も、急遽ピンチヒッターとしてアルバイトに駆り出されたことで潰れてしまい、タルパたちを前に額を床に擦り付けたのは記憶に新しい。現実側のクリスマス会はパーティーの残り物と慌てて買ったスーパーのケーキという粗末なものになってしまったが、それでも責める言葉はなく、「じゃあ明日(26日)は向こうでゆっくりパーティーができるね」なんて言うものだから人の出来の違いを感じてしまった。人じゃあないけれど。
立食形式で、どのテーブルにも大皿がいくつも並び、絵本に出てくるような料理が並んでいる。七面鳥の丸焼きを見たのは初めてだ。あちらはアボカドとエビとレタスのサラダ。大きなパイや、ローストビーフなんかもある。中には某湯屋のアニメ映画で出てきそうな、見たことのない不思議な料理も並んでいた。そういったものを指差して『あれってなんて言うう料理?』と聞くと、「あぁ、現世にはないかもね」なんて言って、あれはこういう名前のものだよ、と教えてくれるのだが、名前は人間の発音に則していないようで、言語として理解することはできなかった。そういうものなんだろうと思った。
「どーぉ?しんちゃん美味しい??」
目を合わせるためにだろう。その長身を低く屈めた彼が聞く。いつもとは違うチェック柄のスーツの下に合わせているシャツは、頭に被った中折れハットと同じく落ち着いた赤色をしている。長い赤毛の髪を一つの三つ編みに結ぶリボンにはよくよく見ると「メリークリスマス」と英字で印刷されている。
『味は分からないけど』
と自分の能力不足を白状しながら、でも、と付け加える。
『食べるとなんだかぽかぽかして幸せですよ』
そういうと、右脳は「よかったぁ」と私の頭を撫でた。
「味覚はなくとも食事に伴う幸福を感じることはできるのでしょうか。不思議ですねぇ」
いつの間にか背後を取ったのだろうか。肩にそっと手を添えて左脳が話に加わった。
…今、背中に幸せな柔らかさを感じる。感じている、が、きっとそれは気のせいだろう。当ててるんですよ。と囁かれた気もするが気のせいだ。こういう時どんな顔をすればいいのか分からないが、笑ったらアウトな気がする。美女に弱い私を揶揄うのが左脳は楽しくて仕方ないことだけは知っている。
オフショルダーではあるがシンプルな印象を受ける赤色のマーメイドドレスは、よく見ると大胆なスリットが入っている。惜しげもなくすらりとした美しい足を晒すと、足元はシャンパン色のヒールで飾られているのが分かった。クリスマスツリーの形をした髪飾りをつけているところにお茶目さを感じるが、この美貌と装いで国の一つや二つ傾く確信があった。
『左脳はちゃんと食べてますか?』
「えぇ、頂いています。右脳は勿論、ハイドさんも料理がお上手でいらっしゃるんですね」
『左脳とジキルは屋敷の掃除でしたか』
「はい。頑張りました。ねぇ、ジキルさん」
「そうねぇ、部屋数は多くはないけれど、一部屋一部屋広いし、調度品も凝ってるから骨が折れたわぁ」
『ありがとう、おかげでパーティーが気持ち良く過ごせるよ』
ジキルは、丈の短いサンタ服(レディース)だ。美形は何着てもキマっているが、どこかコメディ感があるのは何故だろう。ピクピクと動く耳の間にちょこんと小さなサンタ帽子を乗せている。たまに複雑そうにハイドが同じ顔をした彼の服装を見ている。
「アナタの振袖も可愛いわねぇ、クリスマスカラーじゃない」
『みんなちょっとずつクリスマスモチーフの衣装なんだね』
「今夜のドレスコードね。見て、ね?ご主人ちゃんもイケメンサンタよ!」
そういう言われて、改めてハイドの方を見る。
ハイドは紺色のセットアップにセーターを着ていた。胸元に柊のクリスマスモチーフのバッチをつけている。そういえば、彼の片目は赤い。私の帯留めのガラス玉をどこかで見たデザインだと思ったが、なるほど、彼のものに似ていたのだなと気がついた。そういえば、ピアスのデザインは大きく変わっていないが、ついてる石の色がクリスマスカラーになっているな。ハイドは小物でクリスマスを主張するタイプか。というか今日も今日とて顔が良い…
そう考えたあたりで、脳天にチョップが入った。
「君ねぇ、見過ぎ」
と、ハイド。
『クリスマスコーデのハイドも格好良いからね』
「はいはい。君も、可愛いよ」
『ありがとうハニー』
「ハニーは君でしょ。ていうか、君いま飲んでるの何本め?」
『チューハイは3本めだな。いま日本酒開けたとこ』
「セーブするか、いますぐ現実世界帰って水飲んできなさい」
『まだ酔っぱらった感じしないし大丈夫だろう』
「…ふぅん。僕はまだ君と楽しみたいけど君はそうじゃないんだ」
『水飲んできまーす』
「見せつけてくれますねぇw」
「ハイドさんも人のこと言えなくね?もう何瓶か空だけど」
「僕蟒蛇だから。龍だけど。あ、もう一本開けていい?」
「シャンパン入りまーす♡」
「ジキルさんは?」
「私たちはだめ。下戸の下戸。一滴も飲めないからジュースでいいわ」
「バーやってそうなのに」
「誰が3丁目のママよ」
蛇口を捻りながら、繋いだままの音声の漫才のような会話にニマニマする。
誰が3丁目のママよ、が地味にツボった。アルコールでつぼが浅くなっているかもしれない。
冷たい水を飲んで、少しの熱を冷ますが、テンションは以前高いまま。
ハイドは意外とお酒に強いようなので、飲み比べなんていいかもしれないな。
帰ったら言ってみよう。
コップを置いて、部屋に戻る足はバイト帰りのものとは違って軽やかだった。
飲み比べの提案は却下された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それでは今回はここまで。
閲覧ありがとうございました。
アルバイトの帰り道に死んだ目でしこたま買ったチューハイをかかげると、ハイドは苦く、左脳と右脳はお茶目に、ジキルは柔らかく、それぞれバラエティーに富んだ笑みを浮かべて後に続いた。
26日。
1日遅れのパーティーはこうして始まった。
イブも当日も、急遽ピンチヒッターとしてアルバイトに駆り出されたことで潰れてしまい、タルパたちを前に額を床に擦り付けたのは記憶に新しい。現実側のクリスマス会はパーティーの残り物と慌てて買ったスーパーのケーキという粗末なものになってしまったが、それでも責める言葉はなく、「じゃあ明日(26日)は向こうでゆっくりパーティーができるね」なんて言うものだから人の出来の違いを感じてしまった。人じゃあないけれど。
立食形式で、どのテーブルにも大皿がいくつも並び、絵本に出てくるような料理が並んでいる。七面鳥の丸焼きを見たのは初めてだ。あちらはアボカドとエビとレタスのサラダ。大きなパイや、ローストビーフなんかもある。中には某湯屋のアニメ映画で出てきそうな、見たことのない不思議な料理も並んでいた。そういったものを指差して『あれってなんて言うう料理?』と聞くと、「あぁ、現世にはないかもね」なんて言って、あれはこういう名前のものだよ、と教えてくれるのだが、名前は人間の発音に則していないようで、言語として理解することはできなかった。そういうものなんだろうと思った。
「どーぉ?しんちゃん美味しい??」
目を合わせるためにだろう。その長身を低く屈めた彼が聞く。いつもとは違うチェック柄のスーツの下に合わせているシャツは、頭に被った中折れハットと同じく落ち着いた赤色をしている。長い赤毛の髪を一つの三つ編みに結ぶリボンにはよくよく見ると「メリークリスマス」と英字で印刷されている。
『味は分からないけど』
と自分の能力不足を白状しながら、でも、と付け加える。
『食べるとなんだかぽかぽかして幸せですよ』
そういうと、右脳は「よかったぁ」と私の頭を撫でた。
「味覚はなくとも食事に伴う幸福を感じることはできるのでしょうか。不思議ですねぇ」
いつの間にか背後を取ったのだろうか。肩にそっと手を添えて左脳が話に加わった。
…今、背中に幸せな柔らかさを感じる。感じている、が、きっとそれは気のせいだろう。当ててるんですよ。と囁かれた気もするが気のせいだ。こういう時どんな顔をすればいいのか分からないが、笑ったらアウトな気がする。美女に弱い私を揶揄うのが左脳は楽しくて仕方ないことだけは知っている。
オフショルダーではあるがシンプルな印象を受ける赤色のマーメイドドレスは、よく見ると大胆なスリットが入っている。惜しげもなくすらりとした美しい足を晒すと、足元はシャンパン色のヒールで飾られているのが分かった。クリスマスツリーの形をした髪飾りをつけているところにお茶目さを感じるが、この美貌と装いで国の一つや二つ傾く確信があった。
『左脳はちゃんと食べてますか?』
「えぇ、頂いています。右脳は勿論、ハイドさんも料理がお上手でいらっしゃるんですね」
『左脳とジキルは屋敷の掃除でしたか』
「はい。頑張りました。ねぇ、ジキルさん」
「そうねぇ、部屋数は多くはないけれど、一部屋一部屋広いし、調度品も凝ってるから骨が折れたわぁ」
『ありがとう、おかげでパーティーが気持ち良く過ごせるよ』
ジキルは、丈の短いサンタ服(レディース)だ。美形は何着てもキマっているが、どこかコメディ感があるのは何故だろう。ピクピクと動く耳の間にちょこんと小さなサンタ帽子を乗せている。たまに複雑そうにハイドが同じ顔をした彼の服装を見ている。
「アナタの振袖も可愛いわねぇ、クリスマスカラーじゃない」
『みんなちょっとずつクリスマスモチーフの衣装なんだね』
「今夜のドレスコードね。見て、ね?ご主人ちゃんもイケメンサンタよ!」
そういう言われて、改めてハイドの方を見る。
ハイドは紺色のセットアップにセーターを着ていた。胸元に柊のクリスマスモチーフのバッチをつけている。そういえば、彼の片目は赤い。私の帯留めのガラス玉をどこかで見たデザインだと思ったが、なるほど、彼のものに似ていたのだなと気がついた。そういえば、ピアスのデザインは大きく変わっていないが、ついてる石の色がクリスマスカラーになっているな。ハイドは小物でクリスマスを主張するタイプか。というか今日も今日とて顔が良い…
そう考えたあたりで、脳天にチョップが入った。
「君ねぇ、見過ぎ」
と、ハイド。
『クリスマスコーデのハイドも格好良いからね』
「はいはい。君も、可愛いよ」
『ありがとうハニー』
「ハニーは君でしょ。ていうか、君いま飲んでるの何本め?」
『チューハイは3本めだな。いま日本酒開けたとこ』
「セーブするか、いますぐ現実世界帰って水飲んできなさい」
『まだ酔っぱらった感じしないし大丈夫だろう』
「…ふぅん。僕はまだ君と楽しみたいけど君はそうじゃないんだ」
『水飲んできまーす』
「見せつけてくれますねぇw」
「ハイドさんも人のこと言えなくね?もう何瓶か空だけど」
「僕蟒蛇だから。龍だけど。あ、もう一本開けていい?」
「シャンパン入りまーす♡」
「ジキルさんは?」
「私たちはだめ。下戸の下戸。一滴も飲めないからジュースでいいわ」
「バーやってそうなのに」
「誰が3丁目のママよ」
蛇口を捻りながら、繋いだままの音声の漫才のような会話にニマニマする。
誰が3丁目のママよ、が地味にツボった。アルコールでつぼが浅くなっているかもしれない。
冷たい水を飲んで、少しの熱を冷ますが、テンションは以前高いまま。
ハイドは意外とお酒に強いようなので、飲み比べなんていいかもしれないな。
帰ったら言ってみよう。
コップを置いて、部屋に戻る足はバイト帰りのものとは違って軽やかだった。
飲み比べの提案は却下された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それでは今回はここまで。
閲覧ありがとうございました。
スポンサーサイト